おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

われらが背きし者

ぼんやり薄日が差す一日。
統一地方選が告示され、府知事選、市長選に加えて街頭がさらに賑やかになった。
聴衆を虜にする街頭演説ならともかく、名前と政党を拡声器で連呼するだけの選挙カーはやめてほしい。
毎度の事ながら耳障りなだけだよ。

映画「われらが背きし者」を観た。

ここはモスクワの劇場。
女子供たちがバレエを鑑賞している間、別室では男たちによる何かの調印式が行われている。
さて、無事取引を終えたのか男は妻子と共に帰宅の途につく。
雪原の一本道。
事故を装い停止させた彼らの車に、容赦なく撃ち込まれる弾丸。
あらかじめそうなることが決まっていたかのような惨劇から物語は幕を開ける。

場所は変わって、モロッコマラケシュ
夫婦で旅行に来ている英国人の大学教授がいる。
自身の浮気が原因で、弁護士の妻とは現在ちょっとギクシャクしている。
夫婦仲を取り戻すための旅行であったが、相変わらず妻はつれない。
まあ、身から出た錆なのだから仕方がないんだけれど。

なあ、こっちで一緒に飲まねえが?

妻に席を立たれ、ひとりレストランに佇む彼に、隣の席で仲間と騒ぐロシア人のオッサンが声をかけてきた。
陽気なオッサンのひつこさに負け、一緒に飲み始めた彼。
断れないままロシア人たちのパーティになだれ込む成り行きになった。

酒とドラッグが行き交う怪しげな豪邸。
ここにきてようやく彼は気づく。
こりゃ、やばいところへ来てしまったかも。

それもそのはず。
オッサンはロシアンマフィアであった。

弟分と欧州で組織のカネを洗浄する役割を担ってきたオッサン。
ところが、大ボスが代替わりしてから全てが変わった。
ロシア政府と組んだ大ボスは、一部の上層部だけが儲けられるよう資金洗浄システムを一新。
長年、先代に仕えてきたオッサンは用無しになっただけでなく、カネの流れを知り尽くした邪魔な存在になってしまったのだ。
マフィア界のリストラや。

オッサンの弟分は、資金洗浄に使われている口座を譲渡させられた後、一家共々殺害されてしまった。
次はいよいよオッサンの番だ。
しかも、周りを囲む部下は全て大ボスの息がかかった監視役。
逃げること叶わない。
オッサンとその家族は、いわば囚われ状態にあった。

誰も頼れる人がいない。
そこで藁にもすがる思いで声をかけたのが、たまたまレストランに居合わせた教授であった。

オッサンは彼に言う。
自分はともかく、家族を救いたい。
ロンドンの空港で係官にUSBメモリを渡すだけだ。
頼むッ。

オッサンは握っている口座の闇情報と引き換えにMI6と取引し、家族もろとも英国に亡命するつもりであった。

さあ、とんでもないことに巻き込まれた。
ロシアンマフィアの使い走りなんてまっぴらごめんだよ。

でも、オッサンはともかく、その子供たちを見捨てるのは忍びない。
見ず知らずの人を助ける弁護士という職業柄、彼の妻もまた同じ意見であった。

あなたは、今しがた出会ったばかりの他人のために命かけられますか。
物語は、黒いカネの流れを握るロシアンマフィアの亡命劇に巻き込まれた英国人夫妻を描く緊迫のサスペンス。

張り詰めた不穏な空気が漂う中、保身に走るのか、それとも信義を重んじるのか。
ひょんなことからロシアンマフィアに関わってしまった彼らの心は揺れる。

粛々とした全体的な雰囲気は良いが、あらかた先が読めてしまう点が惜しい。

ケータイの電源を入れているだけで位置情報がバレバレじゃないの?
しかも盗聴まで恐れているのに、なぜ普通にケータイを使っているの?
エドワード・スノーデンは盗聴を恐れレンジだか冷蔵庫の中にケータイを仕舞っていたように思う。
ロシアンマフィアにしてはイロイロ脇が甘いような気がする、突っ込みどころのある一作。

「ジェーン」のユアン・マクレガー
「ムーンライト」のナオミ・ハリス
「アラビアの女王 愛と宿命の日々」のダミアン・ルイス
ハリド・アブダラ
ゲーム・オブ・スローンズ」のマーク・ゲイティス
「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」のジェレミー・ノーサム

「レイルウェイ 運命の旅路」のステラン・スカルスガルド
「記憶探偵と鍵のかかった少女」のサスキア・リーヴス
アリシア・フォン・リットベルク
ブラック・シー」のグリゴリー・ドブリギン
「悪の法則」のヴェリボール・トピッチ
マレク・オラヴェック、
パヴェウ・シャイダ共演。

原題「OUR KIND OF TRAITOR」
2016年 イギリス、フランス制作。