おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ライブ・フレッシュ

桜が一気に花開き見ごろを迎えた。
ダサいのを想像していた新元号が意外にカッコよくて驚く。
元号なんてもういらねーと思っていた人々にも馴染みやすいのでは。

映画「ライブ・フレッシュ」を観た。

時は1970年。
フランコ独裁政権下のスペイン マドリード
戒厳令で静まり返った夜の街に女の絶叫が響く。
どうやら娼館の女が出産間近のようだ。

大きなお腹を抱え、娼館のママに連れられて病院に向かおうとするもののタクシー一台通りゃしない。
通りすがりの回送バスを捕まえ乗り込んだが間に合わず。
急遽バスの中での出産となった。
娼館ママと運転手の協力のもと、かわいらしい男の赤ちゃんが取り上げられた。

このドラマティックな出産劇は、暗い世相を吹き飛ばすおめでたニュースとして報じられた。
母子は市長の表敬訪問を受け、産着や一生無料で市バスに乗れるフリーパスをプレゼントされるのだった。

それから20年。
あまたの祝福を受けた赤ちゃんは、宅配ピザ屋で働く青年になっていた。

彼は、出会って間もないイタリア領事の娘に思いを寄せている。
これがドラッグに溺れるどうしょうもないはねっ返り娘じゃった。

親の留守をいいことにヤクの売人に配達を依頼する彼女は、売人と勘違いして青年を屋敷に招き入れてしまう。
ゆきずりの相手に過ぎなかったのに、一方的に思いを募らせ居直り続けるこの青年に彼女は恐怖を覚えた。
一方、青年にしてみれば、なぜ急につれなくされるのか理由が分からない。
ついに彼女は拳銃を手にした。

ほどなく、銃声の通報を受け二人の刑事が乗り込んできた。
パニックになった青年が奪った拳銃を手離そうとしないものだから、刑事と揉み合いになってしまったではないか。
その時、暴発した拳銃が運悪くもうひとりの刑事を撃ち抜く。
ああ、なんてこと。

それから数年後。
刑務所のテレビにバルセロナ パラリンピック車椅子バスケの模様が映し出されている。
それをぼんやり眺めていた青年は、活躍するひとりの選手に目が釘付けになった。
忘れもしない。
あの時、撃たれた刑事ではないか。
しかも勝利を勝ち取った選手に駆け寄る妻は、なんと彼の愛した彼女だった。

二人はとても幸せそうだ。
なんなの、この落差。
彼はひとり、刑務所の中で憎悪を募らせるしかないのだった。

物語は、市バスの中で生を受けた青年の波乱に満ちた半生を追う愛憎劇。

問題を孕み複雑に絡み合った運命の歯車は、やがて原点へと帰結してゆく。
辻褄が合うよう運命は巡り巡るものだと物語はいう。
合間に流れるファドが、時に不条理ともいえる人生を高らかに歌い上げる。

当初はストーカーまがいのクズにしか見えない青年。
素朴さゆえ誤解を受けやすいその人柄を知るにつれ、彼を捉える視点が様変わりしてゆく。

嫉妬に狂う愛は独占欲でしかない。
女が男に求めること。
それは誠実であることに尽きるのではないか。

リベルト・ラバル
フランチェスカ・ネリ
BIUTIFUL ビューティフル」のハビエル・バルデム
ホセ・サンチョ
シチリア!シチリア!」アンヘラ・モリー
ボルベール 帰郷」のペネロペ・クルス
ピラル・バルデム
パンズ・ラビリンス」のアレックス・アングロ共演。

原題「CARNE TREMULA」
1997年 スペイン、フランス制作。
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