おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

コラテラル

やや雲の多い晴天の一日。
桜の花びらがアスファルトにモザイク模様を描き出していた。
お天気おねいさんは春のコートで良いと言っていたが、やっぱりまだ寒くダウンが手放せない。

映画「コラテラル」を観た。

夕暮れ前のロサンゼルス。
事務所の喧騒から逃れるように車のドアを閉め、車内の清掃を済ませると男は夜勤に出発する。

彼は、几帳面で誠実がモットーのタクシードライバー
この道12年。
街を知り尽くしたベテランドライバーだ。

仕事柄、彼は様々な乗客に出会う。
静かな客ばかりとは限らない。
逃げ場のない車内で、大声でまくし立てる乗客のお喋りを延々と聞かされることもままある。
そんな時、彼はサンバイザーに挟んだ南国リゾート モルディブの写真を見つめる。
澄んだ青い空と海。
それは、つかの間喧騒を忘れさせてくれる彼の癒やしアイテムであった。

この日彼は、たまたま乗せた女性の乗客に、そのアイテムを気前よくプレゼントしてしまう。
検事だという彼女。
仕事のプレシャーに押しつぶされそうになりながら日々働く話を聞き、このしとにこそ癒しが必要だと思ったのだ。

さて、彼女に引き続き乗せた客は、いけ好かない野郎だった。
人々は冷たく無関心、そんなこの街が大嫌いだと悪びれもなく語る男だ。
不動産を扱うビジネスマンだというこの乗客、これから商談のため5件をハシゴするという。
ついては割増し料金を払うので、一晩だけお抱え運転手になってもらえないだろうかというのだ。

こうして彼は、1件目の商談に向かった乗客を車内で待つことしばし。
いつものようにサンバイザーを下ろすも、そこに癒やしアイテムは無い。
・・・そっか、彼女にあげちまったんだ。

それは癒しと同時に、ラッキーアイテムだったのかもしれない。
ふと、嫌な予感がした。

その時、フロントガラス目掛けてビルの上から人が降ってきたではないか。
なんてことだろう。
彼の乗客は、商談に来たビジネスマンなどではなかった。
顧客の依頼を受け、ある裁判にからむ検察側の証人を次々と消して回る恐ろしいヒットマンじゃった。

さあ、大変。
拳銃で脅され、逆らえないまま次の「商談」へ向かう羽目になった。
冷酷極まりないが、物事の核心を突いた持論を展開するヒットマンにぐうの音も出でない。
仕事が終われば無事解放してもらえることを祈りつつ、このまま言いなりになるしかないのだろうか。

しかし、彼はまだ何も知らなかった。
オークランドでもタクシードライバーが次々と人を殺害した後、謎の自殺を遂げるという謎めいた事件が起きていたのだった。

それと知らず乗せた乗客はヒットマンじゃった。
物語は、犯罪の片棒を担がされることになったタクシードライバーの顛末を描くスリリングなクライムサスペンス。

虚無感と孤独を背負うヒットマンと、誠実だがややもすれば保身に走りがちなタクシードライバー
偶然出会った世知辛い世を生きる二人の男。
立場上、絶対に相容れない彼らが、いつしか互いの最大の理解者になってゆく。
そんな感情の機微が見どころ。

もしも無事仕事を終えた暁には、ドライバーは解放されていたのだろうか。
もうひとつのエンディングを妄想せずにはいられない。
早いうちからあらかた予想が付いてしまう終盤の展開こそ惜しいが、台詞に酔うなかなかの一作。

刑事役のマーク・ラファロがシュッとしている。
こんな時代もあったのねと、腹の出た中年体型の彼しか知らない観客には嬉しい驚きだった。

ジャンゴ 繋がれざる者」のジェイミー・フォックス
再会の街で」のジェイダ・ピンケット・スミス
「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」のトム・クルーズ
フォックスキャッチャー」のマーク・ラファロ
ピーター・バーグ
ラン・オールナイト」のブルース・マッギル
「ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して」のバリー・シャバカ・ヘンリー
イルマ・P・ホール
「ライブ・フレッシュ」のハビエル・バルデム
バンク・ジョブ」のジェイソン・ステイサム共演。

原題「COLLATERAL」
2004年 制作。