おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

おっぱいとお月さま

午後になって少し風が出てきた。
ぽかぽかと暖かな晴天の一日。

映画「おっぱいとお月さま」を観た。

ここはスペイン カタルーニャの町。
大勢がひしめく広場で、おそろいのチームカラーを身につけた登り手と呼ばれる人々がタワーを組んでゆく。
イッテQで宮川大輔も挑戦していた、この地方の伝統祭り 人間タワーだ。

小っさな少年がタワーの頂点を目指し、おずおずとよじ登ってゆく。
何層にも及ぶ人間タワー。
バランスが崩れればたちまち崩れ怪我人が出る。
命がけの祭りだ。

少年の名はテテ。
チームリーダーの親父が、下から大声でハッパを掛ける。
カタルーニャの誇りを見せつけるんだーッ!
タマに力を入れろーッ!

とはいえこの高さ。
足がすくむ。
それにタマに力って何だよ。
わけわかんねえよ。

親父の叫びに集中力を削がれ、あと一歩の勇気が出ない少年。
あえなくタワーは崩壊。
勝利の栄光はライバルチームに持って行かれてしまった。

さて、少年には生まれたばかりの弟がいる。
母ちゃんのおっぱいを独り占めするこいつが超むかつくのだ。

女の人はミルクが詰まっているタンクだと思い込んでいる少年。
そのタンクに夜な夜なミルクを注ぐのは親父のような男たちだ。
しかし注げども注げども、弟が全部飲み干してしまうものだから彼にはミルクが回ってこない。
ちきしょう。

そこで彼は、自分だけのおっぱいが見つかりますようにと月に願いをかけた。
とはいえ大きすぎても嫌。

こうして理想のおっぱいを探す彼の前に、それは現れた。
素晴らしい美乳の持ち主は、興行のためフランスから来ている旅芸人の女だった。

同じ祭チームに所属する兄貴分の青年は、彼女をひと目見るなり電撃に撃たれた。
情熱的な恋に落ちてしまったのだ。

一方、少年の恋はそれとはちょっと違う。
あくまでおっぱいが主体。

しかし、同じ女に恋する二人の前には大きな壁が立ちはだかっていた。
彼女は人妻だったのだ。
さあ、二人の恋の行方はいかに。

物語は、おっぱいに恋した少年のみずみずしい雑感を綴ったヒューマンドラマ。

親の愛情の象徴だったおっぱいを弟に奪われた少年。
彼の愉快な空想をまじえ、男女の秘め事や性的嗜好を、これぞ人間の営みなのだと言わんばかりの大らかな描写で見せ付ける。
大人の意表をつく子供らしい感性が見どころ。

誰もが夢中で求めたおっぱい。
やがて弟妹が生まれ、親の愛情を一気に奪い取られたような寂しさ。
そんな忘れていた遠い記憶をふっと呼び覚ます一作。

ガラスの水差し、鳥籠にかけられた色とりどりの可愛らしい布カバーといった、カタルーニャの素朴な日常風景が素敵。

ピエル・ドゥーラン
それでも恋するバルセロナ」のアベル・フォルク
ラウラ・マニャー
「ジャッカル」のマチルダ・メイ
ジェラール・ダルモン
ミゲル・ポベダ
ヘニス・サーンチェス共演。

原題「LA TETA Y LA LUNA」
1994年 スペイン、フランス制作。