おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ライク・ア・キラー 妻を殺したかった男

ぐんぐん気温が上がり、日中はコートのいらない陽気になった。
道端に咲くオレンジのナガミヒナゲシが通りのあちこちをを彩っている。

映画「ライク・ア・キラー 妻を殺したかった男」を観た。

雪が舞う、ここは50年代後半のニューアーク
上映中のエリザベス・テイラー主演「バタフィールド8」のチケットを求め、続々と人々が映画館の窓口にやってくる。
その中に、冴えない中年男がいる。
独りで来た彼は、館内にいた若い友人に声をかけいったん席に付くも、すぐさま席を立つ。
そしてそのまま車で走り去ってしまう。
はて?
彼はいったい何のために映画館に来たんだろう。
そんな不可解なシーンから物語は幕を開ける。

ここに、趣味でサスペンス小説を書く建築家の男がいる。
短編が雑誌に掲載されるほどの腕前で、本業そっちのけで熱中している。
妻は不動産販売のトップセールスレディ。
自身が設計した豪邸に暮らす、一見して何不自由ない優雅なカップルに見える。

ところがね、結婚4年目の妻とはそりが合わずケンカが絶えない。
やたら嫉妬深くて神経質な妻の性格に、もううんざり。
しかも離婚するなら自殺をすると彼を脅すのだ。
ぐぬぬ、何と忌々しい女だろう。
憎しみさえ覚える。
いっそ死んでしまえばいいのに。

おりしも巷では、バスの休憩所で女の刺殺遺体が発見される事件が紙面を騒がせていた。
容疑者は書店主である夫だという。
とはいえ本人は無罪を主張してる上に、証拠もなく捜査は迷宮入りのようだ。

小説家としての興味だったのか。
それとも、同じく妻を憎む夫としての共感だったのだろうか。
彼はふと、妻を殺したこの男の顔が見てみたくなった。

こうして、のこのこと書店へやってきた彼が目にしたのは、悲壮感漂う冒頭の冴えない中年男。
妻を亡くし、冤罪に苦しむ気の毒な男にしか見えなかった。

さて、ほどなく事態は急変する。
死んでしまえばいいのにと思っていた妻が、本当に死んじまった。
バスに乗ったまま消息を絶った彼女が、高架橋の下で転落遺体となって発見されたのだ。

自殺なのか他殺なのかは分からない。
ただ夫婦仲が悪かったことが災いし、彼は、あの書店主と同じく妻殺しの容疑者に仕立てられてしまうではないか。

死を願ってはいたが、殺してはいない。
その主張が確かなら、書店主の妻と彼の妻を殺した連続殺人犯は他に存在することになる。

彼らは、本当に妻を殺したのだろうか。
それとも・・・。
物語は、妻殺しの容疑をかけられた二人の男の真相に迫るミステリー。

中原淳一が描くおしゃれなイラストを思い出す、裾の広がったスカートをはじめ華やかさのある50年代の文化が見どころ。

書店主をモデルにサスペンス小説を執筆する主人公。
一方で、自身の妻殺害事件に関する考察も本人によるものかと思いきや、ラストでまさかのどんでん返し。
第三の書き手の登場によって、主人公の妻殺害事件の真犯人が明らかになる。
地味ながら、このラストの巧妙な仕立てにうなる一作。

死霊館 エンフィールド事件」のパトリック・ウィルソン
「NEXT ネクスト」のジェシカ・ビール
ガール・オン・ザ・トレイン」のヘイリー・ベネット
ジョン・オズベック
クリスティン・ダイ
おみおくりの作法」のエディ・マーサン
ラデック・ロード
ケリー・メンゲルコック
「TIME タイム」のヴィンセント・カーシーザー共演。

原題「A KIND OF MURDER」
2016年 制作。