おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

未来を花束にして

ぽかぽかと暖かな晴天の一日。
水挿ししていたカランコエから白いヒゲ根がにょきにょきと出てきた。
そろそろ鉢に植え時かも。

映画「未来を花束にして」を観た。

気分屋で心の平静を欠く女性に政治判断は向かない。
女性参政権を認めたら彼女たちは次々と権利を要求してくるだろう。
そうなれば歯止めが利かなくなり社会構造の崩壊に繋がりかねない。
そんなアホな理屈が公然と叫ばれていた時代があった。

時は1912年。
ここはロンドンの洗濯工場。
もうもうとアルカリ性の蒸気が立ち昇る中、女たちが汗水たらして黙々と働いている。
火傷を負い爛れた皮膚が痛々しい。

その工場で働くひとりの女性がいる。
24歳になる彼女は、7歳の頃からここで働いているという。
同じ職場の男と所帯を持ち、小さな我が子を保育園に預けながらの仕事だ。

洗濯女の仕事は薄給な上、労災が多く過酷だ。
彼女の母がそうであったように多くは短命だという。
今でいうところの派遣社員のような、使い捨ての労働力なのだ。

ある時、彼女は街で暴動に遭遇した。
子育てをする女性を象徴するようなショーウィンドウディスプレイめがけ、女たちが次々と投石をしている。
女性に参政権を!
女たちは投石をしながら口々に叫ぶ。
なんて暴力的なんだろう。
通りで騒ぎに巻き込まれ、彼女は危うく怪我をするところだった。

おりしも、急進的な参政権論者エメリン・パンクハーストなる活動家によって、全国的な抵抗運動が呼びかけられていた最中の出来事じゃった。

彼女の洗濯工場でも、活動家の下院議員夫人が女性の労働環境改善を訴えるアジテーションを展開していた。
ついては、大臣主催の公聴会の場で職場の労働環境について証言をしてくれる女性を募集しているというのだ。

働かなくてもよい立場の人間はお気楽なものだ。
彼女を含め、洗濯女たちは日々生活するので精一杯。
下院議員夫人がいくら熱弁を振るおうとも、それはインテリぶった裕福な女性たちの暇つぶしにしか見えなかった。

世の中ってこんなもの。
そうやって全てを諦めていた彼女の心が突然揺らぐ。

経営者である工場長が、若い洗濯女を事務室に呼びつけわいせつ行為を働いている姿を目の当たりにしたのだ。
それは、耐え難い記憶を呼び戻した。
あれはかつての自分。
そう、彼女もまた工場長から同じ行為を受けていたのだ。
弱い労働者の立場では経営者にたてつくこともままならず、彼女は口を閉ざしひたすら耐え忍ぶしかなかった。

こうして悔しさと憤りに突き動かされた彼女は、活動家の集会に足を踏み入れ、労働環境を訴える職場の代表として証言台に立つ決心をした。
議員らの野次が飛ぶ中、大臣は神妙な面持ちで彼女の話に耳を傾けてくれた。
おお、ついに女性の権利が認められ、労働環境が是正されるのだろうか。

いやいや、世の中そんなに甘くはないのだった。

物語は、活動家エメリン・パンクハーストの呼びかけに応じ、女性の参政権を求めて闘った無名の女性たちを描いたヒューマンドラマ。

子供思いで、特に少女たちに自分と同じ道を歩ませるのが忍びなかった彼女。
当初は自身の憤りから始まった政治運動が、女性の未来のために闘うという大局的な目的に変化してゆく点が見どころ。

投票権は当たり前のモノではない。
偉大な先人達が投獄をものともせず闘い、勝ち取ってくれた賜物なのだと物語はいう。

彼女たちから受け取ったこの花束を捨ててしまう?
それとも、次の世代に繋いでゆく?
それはあなた次第だ。
投票率の低い若い人たちにぜひ観てほしい一作。

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夜に生きる」のブレンダン・グリーソン共演。

原題「SUFFRAGETTE」
2015年 イギリス、フランス制作。