おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

メトロ42

時折雨がぱらつく、どんよりとした一日。
平成の最後にあからさまな忖度を見た。
なんだろうこの違和感。
自由や平等なんてものは刷り込みによる幻想に過ぎず、我々は思っている以上に前時代的な国に生きているのかも。

映画「メトロ42」を観た。

大都市モスクワの地下を縦横に走る地下鉄トンネル。
ひとりの老技師がトンネル内を点検して回っている。
おや?
ちょっと気になる水漏れがある。
長年の勘から、よくない地下水だと彼は言う。

しかし地下鉄の司令室は、呑んだくれ爺さんの戯言とまるで取り合わない。
彼らいわく、トンネルに溜まる地下水はポンプで汲み上げているから問題ないのだという。
・・・だといいんだけれど。
そんな不穏なシーンから物語は幕を開ける。

金曜の朝を迎えたモスクワの街は大渋滞。
埒が明かず、人々は地下鉄の駅になだれ込む。
このラッシュのホームである女性に一目惚れをした青年。
彼女の気を惹くため、彼は走り出した車内で大きな声を上げた。

乗客の皆さん!
当地下鉄は、ただ今ボロデンィンスカヤ駅方面に向かっております。
1948年に建設された駅ですが、モスクワ川に隣接しており土壌が軟弱なため閉鎖されました。
通過する車両の灯りのみで見える幻の駅です。
さあ、今ですよッ。
窓の外をご覧ください!

暗闇にぼんやりと浮かび上がる幻の駅。
乗客らの感嘆の声が上がって間もなくのことじゃった。
例の水漏れ箇所からついにトンネルが崩落。
車両前方に滝のような水漏れを確認した運転手は、慌てて急ブレーキをかけた。

悲鳴のような軋みを上げて車両は脱線。
満員の乗客は将棋倒しの大惨事になった。
しかも、トンネルにはモスクワ川の水が怒涛のように流れ込んでくる。
さあ、彼らはいったいどうなってしまうのだろうか。

物語は、地下鉄トンネルの水没という大都市を襲う脅威を描いたサバイバルパニック。

エゴや愚かさといった人間模様をまじえつつ、老朽化した都市インフラの脆さを見せ付ける。

スターリンの別荘と直結していたトンネルや、いくつもの防空壕が存在していたというモスクワの地下に関する薀蓄が見どころ。

普段地下鉄を利用しているけれどトンネルが崩落するなんてまるで考えたこともなかった。
地震や老朽化で、我々もこういった事態に遭遇する可能性があるのに。
昼ドラみたいな人間模様はともかく、危機意識を高めるにはよい一作。

この作品を許可したロシアのおおらかさに驚く。
都市を襲う脅威をガッズィーラに喩えなくては表現できない我が国とはえらい違いだ。

ブラック・シー」のセルゲイ・プスケパリス
スヴェトラーナ・コドチェンコワ
アンフィサ・ヴィスティンガウゼン
アナトリー・ビェリー
アレクセイ・バルドゥコフ
カテリーナ・シュピツァ
イェレーナ・パノーヴァ
ニコライ・リャブコフ
セルゲイ・ソスノフスキー
ヤロスラフ・ザルニン共演。

原題「METRO」
2012年 ロシア制作。