おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

オール・アバウト・マイ・マザー

気温は低めながら、からりとした晴天の一日。
プランターシャーレーポピーに大量のアブラムシが発生し、あっけなく全滅してしまった。
ケシ科にもアブラムシが付くとは知らなかったよ。
土づくりが悪かったのか、はたまた成長過程で植え替えをしたこともあり株自体が軟弱だったのかもしれない。
ぐったりした株から蕾を切り取り、水挿ししておいたら奇跡的に花開いた。
この真紅の花一輪が救いだ。
今回の失敗を踏まえて、来年こそはたくさん花を咲かせたい。

映画「オール・アバウト・マイ・マザー」を観た。

ここはマドリードの病院。
ベッドに横たわる患者にいくつもの点滴が繋がれている。
脳波のテストを終え、家族の承諾を得て臓器移植の手続きが行われようとしている。
そんなシーンから物語は幕を開ける。

ここにドナーと患者とを繋ぐ、臓器移植コーディネーターとして働く看護士がいる。
彼女はシングルマザー。
このたび17歳の誕生日を迎えた息子がいる。

作家志望の息子は、母ちゃんについて本を書くつもりらしい。
ついては誕生祝いに、父の話をしてくれというのだ。
彼は生まれてこの方、父親を知らない。
どんなクソ野郎でもいいから父のことが知りたいのだという。
自分のルーツを知りたい、その気持ち分からないでもないよね。

さて、その晩二人は、誕生祝いを兼ねて舞台劇を観に行った。
タイトルは「欲望という名の電車」。
若かりし頃アマチュア劇団にいた母ちゃんも演じたことがある、なじみの演目だという。
劇に自らの半生を重ね、思わず涙ぐむ母ちゃん。
はて、彼女の夫はどんな男だったのだろう?

やがて舞台も終わり、サインが欲しいという息子のたっての願いで、雨の降る中、母子で主演女優の出待ちをしていた時のことじゃった。
ああ、なんてこと。
女優の車を追って通りに出た息子が、後続車に跳ねられてしまうではないか。
彼は父親を知ることもないまま、あっけなくこの世を去ってしまうのだった。

愛しい我が子を、目の前で亡くした母ちゃんの悲しみはいかばかりだろう。
息子が残した日記から、彼の父親に対する思い汲んだ彼女は、意を決してバルセロナ行きの列車に乗る。
皮肉にも、身ごもった彼女が夫のもとから逃げるように去った17年前と逆の旅路だという。
夫はどんだけ酷い男やったんやろか。
それでも会いにゆくのかねえ。

さあ、バルセロナに着いた母ちゃんは夫の行方を捜しタクシーに乗る。
市街地を抜け、おやおやタクシーは郊外の野原へ。
そこは、大勢の売春婦が客を引き、麻薬取引が行われるアングラな世界であった。
こんなところに夫がいるというのか?
夫、どんだけヤバイ奴やねん。

おや?
客にボコボコに殴られている売春婦がいるぞ。
そのしとこそ、彼女の夫と共に男から売春婦に転じたというLGBT仲間じゃった。

しかも夫は、この友人からカネを盗みトンズラしたというではないか。
人の恩を仇で返すとは、なんという人でなし。
そう夫は、男の嫌な部分と女の嫌な部分を併せ持った、疫病神みたいな男じゃった。

物語は、最愛の息子を亡くした中年女の過去への旅路を描くヒューマンドラマ。

どんだけ酷いDV野郎かと思いきや、なんと夫は売春婦として稼ぐLGBTだという。
物語が進むにつれヒロインの複雑な過去を浮かび上がらせてゆく。

人は助け合いながら生きている。
自己責任の殻に閉じこもることなく見知らぬ人に手を差し伸べる、あるいは見知らぬ人の親切にすがる。
そうすれば人生はより豊かにドラマチックになるよと物語はいう。

疫病神みたいな男が繋いだ人の縁が、巡り巡って和を結んでゆく光景が見どころ。
災いを転じて福となす。
そんな言葉がぴったりな心温まる一作。

アイム・ソー・エキサイテッド!」のセシリア・ロス
「女王フアナ」のエロイ・アソリン
「私が、生きる肌」のマリサ・パレデス
アントニア・サン・フアン
「ライブ・フレッシュ」のペネロペ・クルス
ロサ・マリア・サルダ
ミツバチのささやき」のフェルナンド・フェルナン・ゴメス
トニ・カント共演。

原題「TODO SOBRE MI MADRE」
1998年 スペイン制作。