おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

夏の嵐

気温が上がり、ぽかぽかと暖かな一日。
そろそろバジルやフウセンカズラの蒔き時かも。
水挿しのシャーレーポピーがわずか数日ではらはらと散ってしまった。
シャーレーポピーは今回が初挑戦。
ナガミヒナゲシのようなひょろっとした形状かと思いきや、意外にもがっしりと根を張り、殻を破って咲く姿といい、力強さと儚さを併せ持ったドラマチックな花だった。

映画「夏の嵐」を観た。

時は1866年。
プロイセンと同盟を結んだイタリアは、敵対するオーストリアの占領下にあった。
そんなイタリアに祖国解放の戦いが迫りつつある春のこと。

ここはヴェネチアの劇場。
オペラ「トロヴァトーレ」が上演中だ。
客席はほぼオーストリア兵で埋め尽くされ、桟敷も含めて満員御礼。

外国人は出て行け!
ちょうど劇が間合いに差しかかった頃、そんな叫びが上がり、桟敷から花束とイタリアの国旗を彩った三色のビラが降ってきた。
ラ・マルモラ将軍が動員令を下したぞ!
祖国のために立ち上がれ!
そんな文言が書かれた、なんとも華やかな宣戦布告。
これがイタリア流の戦いなのだという。

さあ、たちまちオペラは中断。
劇場はものものしい雰囲気になってしまったよ。

桟敷から、一連の騒動を不安げに見守る貴婦人がいる。
彼女はヴェネチア社交界の華、伯爵夫人だ。
祖国解放のため義勇軍として地下活動に身を捧げる従兄が、このデモの扇動者なのだという。

しかも従兄は、オーストリア将校相手に決闘まで挑んでしまったものだから、さあ大変。
伯爵夫人の嘆願も虚しく、従兄は逮捕の末、流刑になってしまったよ。
ぐぬぬ、憎っくきオーストリア将校め!

ところが意外にもこのオーストリア将校、祖国を蹂躙する傍若無人な軍人といったイメージとは程遠い男じゃった。
ちょっとチャラい若きイケメンで、遠く故郷を離れ、占領地にて憎悪の中で暮らさねばならない兵士の悲哀をとうとうと語るのだ。
生まれてこの方、恋などしたことがなかった伯爵夫人は、そんな男に惹かれてゆく。

しかし、それは許されぬ恋であった。
彼女には夫がいるし、しかも敵国同士ではないか。
愛国者として義勇軍を援助する伯爵夫人と、片やオーストリア将校。
さあ、戦争の足音と共に、燃え上がる二人の恋の顛末はいかに。

物語は、普墺戦争時代のイタリアを背景に、ある伯爵夫人の破滅的な恋の顛末を描いた悲劇。

狡猾な若造にたらし込まれ、聡明な貴婦人が下町の娼婦よりも落ちぶれてゆく様を冷酷な眼差しで見つめる。

水面に反射した月明かりが街をゆらゆらと照らす、インスタ映えするヴェネチアの夜景が見どころ。

他人のことなどまるでおかまいなし。
自身のことしか考えていない子供みたいな男の行動にはいちいち疑問符が付く。
どうしてこんなクズ野郎に惚れ込むのか?
しかし、彼女にはそれがまったく見えていないのだ。
この客観的な視点を完全に失ってしまう感覚が、恋に溺れるということなのだろうね。

憎い。
でも愛しい。
まるで演歌みたいな女の情念渦巻く一作。

サスペリア」のアリダ・ヴァリ
「見知らぬ乗客」のファーリー・グレンジャー
マッシモ・ジロッティ
ハインツ・モーグ
「山猫」のリナ・モレリ
クリスチャン・マルカン
マルチェッラ・マリアーニ共演。

原題「SENSO」
1954年 イタリア制作。