おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ラルジャン

穏やかな晴天の一日。
成長期にもかかわらず元気がない。
下葉が黄色く枯れ込んできたアボカドとオレンジの植え替えをした。
鉢をひっくり返してみると、伸びた根が鉢底石を巻き込みサークリング現象を起こしているではないか。
根の剪定をしていい植物と、そうでないデリケートな植物があるという。
さて、アボカドとオレンジの場合どうなのだろう。
判断が付かず、底に土を多めに敷き入れそのまま埋め戻した。
しばらく様子を見てみよう。

映画「ラルジャン」を観た。

ここはパリ市街の瀟洒な住宅。
書斎にいる親父に小遣いをせびりに来た高校生の息子がいる。
彼には借金があり、毎月の小遣いが友達より少ないことが不満らしい。
親父はブルジョワだがカネには厳しく、月々決まった金額しかくれない。
ちぇっ。

そこで彼は、クラスメイトのもとへカネの無心にやってきた。
これをやるよ。
クラスメイトは担保も受け取らず、500フラン紙幣を差し出すではないか。
おや?
よくよく見ると若干紙幣の色合いが違う。
クラスメイトが作った偽札だ。

クラスメイトは使い方を教えようとばかりに、彼を誘いカメラ店にやってきた。
そこで一番安っすいフォトフレームを買い求めると、偽札がお釣りに化ける。
なるほど悪どい錬金術だ。

一方、まんまと偽札を掴まされたカメラ店の店主夫妻。
ぐぬぬ、若造め。
しかし気づいた時にはもう遅い。
パリにはこの手合いがごまんといるらしく、彼らの手元には他にもいくつかの偽札があった。
当局に届けたとしても泣き寝入りだ。
彼らも損はしたくない。
それならいっそのこと使っちまおう。

さっそく夫妻は配達灯油の支払いに使った。
疑うこともなくそれを受け取った灯油ドライバー。
何も知らないままそのカネをレストランで使ってしまったもんだから、さあ大変。
偽札を使う悪党呼ばわりされ告発されてしまったよ。

カメラ店で受け取ったのだ。
そう身の潔白を法廷で訴えても、店主夫妻は知らぬ存ぜぬとシラを切り、彼の訴えは却下されてしまう。
ああ、妻と幼子を抱えた決して豊かではない暮らし。
それなのに彼は、この一件で社会的に貶められた上、仕事をも失ってしまうのだった。

別に人を殺したわけでもないし、皆やってる些細なことでしょ。
物語は、そんな安易な悪意が人から人へ伝染してゆくうちに、世の不条理もあいまって人の人生を狂わせる凶悪事件に発展してゆく様子を描いたヒューマンドラマ。

パリ市民の良心はいかに?
そんなものはなからあるわけがないのだ。
西欧文化では騙すより騙される方が悪いというのだから。
そして、いつの時代も上流階級は罪を免れ、底辺が割を食う。
そんな社会のモラルを問うと同時に、我々がいかにカネに支配されているのか改めて気づかされる。
現代社会を淡々と風刺した、とても後味の悪い一作。

マルク・エルネスト・フルノー
ブリューノ・ラペール
ベアトリス・タブラン
ディディエ・ボーシイ
ヴァンサン・リステルッチ
クリスチャン・パティ
カロリーヌ・ラング
シルヴィー・ヴァン・デン・エルセン
ミシェル・ブリゲ共演。

原題「L'ARGENT」
1983年 フランス、スイス制作。