おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

終戦のエンペラー

昨夜はまとまった雨が降った。
雨上がりの空気がひんやりする曇り空の一日。

映画「終戦のエンペラー」を観た。

時は1945年8月。
原爆を投下され日本は焦土と化した。
だが、なおも天皇は現人神として国民に崇拝されている。
我々は彼を保護リストに入れ、処遇を検討することにした。
そんな前置きから物語は幕を開ける。

さて、東京へ向かう航空機の中、マッカーサー元帥は知日家の准将を呼び意見を求めた。
沿道では2000人の日本兵が待ち構えているという。
一方、こちらはたったの100人。
武装車両があるわけでもなく襲われる危険性は十分にある。

准将いわく、天皇は降伏しろとは言わず、耐え難きを耐えよと国民に命じたという。
天皇に従うこの国の民の忠誠心に疑いの余地はない、というのが彼の意見だった。
ふむふむ、なるほど。

こうしてマッカーサーは武器を持たず厚木飛行場に降り立った。
こちらの余裕をドヤ顔で見せ付け日本人に衝撃を与えるためでもあったし、何より平和のためだ。
占領軍だが、ここは支配者ではなく解放者アピールをせねばならない。

さあ、大空襲で焼け野原と化した東京の街を車列は進み、皇居の向かいにある第一生命ビルに置かれた連合国総司令部に到着。
彼らの仕事、つまりこれから始まるのは裁判にかけるA級戦犯の逮捕だ。
ところが、ここにきて米政府の方針が変わり、保護リストから外された天皇も裁判の対象になってしまった。
連合国側には正義の名のもと天皇に報復を望む声も多かったのだ。

しかし、マッカーサーの使命は報復ではなく日本の再建だという。
民は飢え、国は崩壊寸前。
国民の怒りは一触即発で、天皇の処遇は反乱の引き金になりかねない。
しかもここで国民が拠り所を失えば混乱に乗じて共産主義が入り込む。
それだけは絶対に阻止せねばならない。

天皇を免責すべきか、それとも逮捕すべきか。
マッカーサーは、事実を徹底的に調べ上げ報告書を提出するよう先の准将に命じる。
期限はたったの10日。
きっつい仕事だなや。

さっそく彼は、軍人、宮中職員、政治家といった30名ほどの側近の中から絞込み、天皇の言動について証言を取り始めた。
なあに、天皇の命と引き換えと言えば、彼らも口を割るだろう。

ところが、天皇に関する供述など畏れ多いことで、彼らは多くを語らない。
しかも日本人の背景にある規範や精神はにわかには理解しがたいものばかりで、調査は困難を極めるのだった。

天皇に戦争責任はあるのか否か。
物語は、その真実を見極めるべく、マッカーサー元帥の下で奔走する米国軍人フェラーズ准将の姿を描いたヒューマンドラマ。

マッカーサーの野心と日本の平和的再建。
この二つの方向性がたまたま同じだった、それは歴史上の幸運といってもいいかもしれない。

知日家として日本人特有の観念を理解しようと歩み寄ろうとする一方で、多くの人々がそうであったように持って行き場のない悲しみと憤りが戦争責任の所在を求めてしまう。
そんな主人公の揺れる心が見どころ。

戦争によって引き裂かれた恋人との切ない回想をサイドストーリーとして織り込んでいるものの、既成事実を並べた本筋がわりとあっさりしているため驚きはなく、叙情的だがやや盛り上がりに欠ける。
外国人から見たミステリアスな異国の雰囲気を味わう一作。

バンテージ・ポイント」のマシュー・フォックス
「クリミナル 2人の記憶を持つ男」のトミー・リー・ジョーンズ
コリン・モイ
オール・ユー・ニード・イズ・キル」の羽田昌義
初音映莉子
火野正平
中村雅俊
のぼうの城」の夏八木勲
THE 有頂天ホテル」の西田敏行
伊武雅刀
ラヂオの時間」の桃井かおり 共演。

原題「EMPEROR」
2012年 アメリカ、日本 制作。