バケツをひっくりかえしたような雨から一夜明け、ようやく日が出てきた。
ひんやりした風吹く一日。
映画「ロブ・ロイ ロマンに生きた男」を観た。
17世紀末、飢饉と疫病と強欲な貴族から逃れ、多くのスコットランド人は新大陸へ渡った。
だが一方で、崩壊する祖国に留まり、誇りと名誉に生きた者もいた。
そんな前置きから物語は幕を開ける。
時は1713年。
起伏ある緑の大地が続くここはスコットランドのハイランド(高地地方)。
キルトを纏った男たちの一団が行く。
彼らは、地元の村人たちで構成された自警団。
このあたりに領地を持つ侯爵から依頼を受け、牛を盗んだ窃盗団を追跡している。
王侯貴族は政争に明け暮れ下々の暮らしなど無関心。
政治が機能しないため民は貧しく、その貧しさがゆえにこういった犯罪に走ってしまうのだ。
なんとかせなあかん。
食べるものにも事欠き、このままでは村人は厳しい冬を越すことすら出来ない。
村人たちの面倒を見ている自警団のリーダーにして地元名士の男は考えた。
ハイランドの外へ行けば牛は2倍の値で取引されるという。
そこで300頭の牛を買い、その群れを引き連れてカーライルまで売りに行く。
牛の元手となる千ポンドを侯爵から借り入れても、これなら商売として十分に成り立つ。
こうして彼は、自身の土地を担保に侯爵に借金を願い出るのだった。
なんと、貴族は小作人からの上がりだけでなく貸金業でも儲けていたのか。
さて、仕事柄、それを知った侯爵の家臣。
侯爵のもとに居候している、遊び人で金遣いの荒いイングランド貴族の私生児にささやく。
千ポンドというそこそこまとまった金が動きますぞ。
なんてこと。
民の生活がかかっているカネを、遊び金欲しさに貴族が奪うというのか。
さあ、一体どうなってしまうのだろう。
物語は、イングランド貴族の理不尽な仕打ちに戦いを挑む、誇り高きハイランダー ロブ・ロイ・マクレガーを描いたヒューマンドラマ。
庶民を取り巻く厳しい状況と、貴族の優雅な暮らしぶり。
そのあまりの落差に眩暈がする。
片や仲間の信頼篤い誇り高きハイランダー。
片やイングランドの歪んだ貴族社会が生み出したモンスター。
社会に対する義憤みなぎる、両者の魂をかけた激突が見どころ。
貴族を相手に勝ち目のない戦に身を投じる「バトル・オブ・ライジング コールハースの戦い」と同じく、庶民のやるせなさがひしひしと伝わってくる一作。
ロマンという響きはあまりしっくりこない。
誇りと信念に生きた男のほうが相応しいように思う。
くそ憎たらしいティム・ロスが実にはまり役。
「沈黙 サイレンス」のリーアム・ニーソン
「グレイ・ガーデンズ 追憶の館」のジェシカ・ラング
「天国の門」のジョン・ハート
「ワイルドガン」のブライアン・コックス
「宮廷料理人ヴァテール」のティム・ロス
「バタフライ・エフェクト」のエリック・ストルツ
ブライアン・マッカーディー
ギルバート・マーティン
ヴィッキー・マッソン
アンドリュー・キア共演。
原題「ROB ROY」
1995年 アメリカ、イギリス制作。