おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ヴァーサス

朝から東風が吹き荒れ、頭上は青空だが遠くは暗雲がたちこめている。
不安定な空模様の一日。
切り戻しが足りなかったようで、レモンバームに花芽がつきはじめた。
ところどころ白い花が咲いている。
もっと根元に近い部分でカットした方がよかったのかも。

映画「ヴァーサス」を観た。

総合格闘技の世界チャンピオンの座をかけてリングで闘うロシアと米国の選手。
人々が熱狂するその試合風景から物語は幕を開ける。

ここに、みごと米国の選手を下し、世界チャンピオンの座に王手をかけた男がいる。
親父も同然のトレーナーと二人三脚で格下のリーグからこつこつと勝利を積み重ねてきた苦労人だ。

さて、試合を終えた彼が、クラブで内輪だけのささやかな祝いの席を設けていた時のことじゃった。
国民のヒーローと報じられ有名になると、様々な思惑を持った人が集まってくる。
そこへやってきた高校時代の同級生もそのひとりだ。

チンピラ風情のそいついわく、公式試合より稼げるいい話があるという。
何のことはない、ヤクザが仕切る会員制のスポーツ賭博クラブへの勧誘だった。

スポーツマンシップに反する行為だし、みんなの期待を裏切るつもりなどさらさらない。
きっぱり断る彼であったが、これが事件の発端になってしまった。

高校時代みんなの憧れだったマドンナを連れやってきたチンピラ。
ええ格好しいなものだから、彼女の前でビジネスをまとめるつもりだったようだが、当てが外れてしまった。
おまけにマドンナはチンピラなどはなから眼中になく、再会した彼と何やらいい雰囲気だ。
ぐぬぬ、おのれ。

チンピラは薬物中毒もあいまって感情の抑制が効かない。
面子を潰され逆上し、男に殺意を抱いた。
さっそく手下を引き連れいい雰囲気な二人を襲い、すさまじいカーチェイスで追い詰める。
こうして男は彼女を守るため、瀕死の怪我を負ってしまうのだった。

脳に動脈瘤ができ、スポーツどころか日常生活すらままならない。
仮に復帰するにしても、海外で高度な手術を受けるための高額費用など捻出できるわけがない。
ああ、このどうしょうもないクズ野郎のおかげで、このまま彼の選手生命は断たれてしまうのだろうか。

物語は、悪党によって逆境に陥れられた総合格闘技選手の再起を描くアクションヒューマンドラマ。

劣等感に満ちた小者感満載なチンピラがやたらギラギラしている。
悪党のひつこさハンパない一作。
ファイターの主人公はどこか影が薄く、どちらかといえば寡黙で献身的なヒロインの方に人間的な強さを感じる。

やむを得ない理由でリングに上がっているならともかく、世界王者を目指すのはあくまで個人の自己満足。
そこに勇気や感動があるのかはなはだ疑問に思う。
そもそも人と人とが殴りあうなんてスポーツとはいえ痛々しくて見るに耐えない。
美しい所作があるわけでもなく、そこにあるのは罵りや挑発の言葉。
そんな暴力めいた格闘技が嫌いなせいもあってハイライトの試合は全く楽しめなかった。
残念。

アレクセイ・チャドフ
セルゲイ・チルコフ
イゴール・スカイヤー
アントン・シャギン
オクサナ・アキンシナ
メルヴィン・マヌーフ共演。

原題「MOLOT」
2016年 ロシア制作。