どんよりじめじめとした梅雨の一日。
映画「君の名は。」を観た。
組紐の里として知られる、ここ湖を抱く山間の田舎町にひとりの女子高生がいる。
彼女の家は、代々地元の神社を守り続ける神職だ。
彼女自身も巫女として年に一度の祭では舞を奉納するのが務めだった。
でもね、彼女はこの町が大嫌い。
彼女の親父は地元土建業者との黒い癒着が噂される町長なものだから、身内としては肩身が狭いのだ。
人付き合いが濃厚な田舎特有の閉塞感であり悩みであった。
あーあ、早うこの町を出たいわあ。
来世は都会のイケメンに生まれ変わりたいわあ。
そんな彼女の願いが天に通じたのだろうか。
彼女は不思議な夢を見るようになる。
目覚めると、東京のど真ん中に暮らす男子高校生になっているではないか。
当初は肉体の違いに驚きと戸惑いを隠せない彼女であったが、次第にそれも慣れてきた。
むしろ見知らぬ少年の、そして憧れの都会暮らしが楽しく思えてしょうがない。
それはそれはリアルな夢じゃった。
ところがね、これただの夢じゃなかった。
一方、彼女が夢を見ている間、東京に暮らす男子高校生は彼女になる夢を見ていたのだ。
スマホンやノートに記した互いの記録から、二人はたびたび魂が入れ替わっていることに気づくのだった。
遠く離れた見知らぬ二人の間にどうしてこんな現象が起きているのかは分からない。
ただ、この入れ替わりによって互いの日常生活に支障をきたすようではマズイ。
そこで二人は運命共同体としてルールを決め、互いに協力を始めるのだった。
物語は、肉体が入れ替わる不思議な現象に遭遇した若い男女の顛末を、切なさ乱れ撃ちで描いたティーン向けSFファンタジーアニメーション。
入れ替わりを繰り返すうちに、互いが気になる存在になってゆく。
しかし運命のいたずらか、互いを知ろうとすればするほど二人はすれ違い続けるのだ。
そんな彼らの切ない思いをヤキモキしながら見守る。
覚めたとたんたちどころに消え行く夢の儚さを、ふいに襲われる記憶喪失に置き換えた表現にうなる。
もしも、ある分岐点まで時間を遡ることで、別の未来が開けるとしたら。
突然の出来事によって愛する人を失った人々の願望を汲んだ一作。
だた、光の演出に長けた作り手の手腕は素晴らしいものの、老若男女を魅了し、ものすごい興行成績を上げた名作と過度な期待をして観ると肩透かしを食らう。
ショートストーリーを切ない感情描写でもってだらだらと引き伸ばしている印象を受ける。
また、入れ替わりを宣伝として大々的にプロモーションしてしまったため、せっかくの冒頭の描写が台無しになってしまっている。
できることなら予備知識ゼロで観たかった。
目頭熱くなる感動には結びつかず、残念。
地上波放送では目障りなCMが、作品と見事にコラボレーションされ一体化していた点が斬新だった。
CMの新しい可能性を見たような気がする。
神木隆之介
上白石萌音
谷花音
市原悦子
てらそままさき
成田凌
悠木碧
長澤まさみ
島﨑信長
石川界人 共演。
2016年 制作。