蒸し蒸しと湿度の高い曇り空の一日。
記録を塗り替えるような一時の猛烈な暑さが収まった。
このままゆっくり秋の空気に向かってくれたらいいのだけれど。
映画「バーフバリ 王の凱旋」を観た。
従兄殿の策略により国王の座を追われた伝説の英雄バーフバリ。
その忘れ形見であることを知らされた主人公。
彼は、親父と母妃を襲った悲劇に、そして背負った運命の重さに愕然とする。
しかも親父を直接その手にかけたのは、親父が誰よりも信頼していた老忠臣だというではないか。
ええええ、なんでや?
一体なにがあったんやぁああ!?
そんな驚愕の前作ラストシーンを踏まえて、物語は再び過去に遡る。
蛮族の侵攻から王国を救い、次期国王の地位を確実なものとした英雄バーフバリ。
国母から戴冠式までつかの間の外遊に繰り出す許しを得た。
老忠臣を従え身分を隠して旅する彼は、辺境の小国で美しくも勇ましい姫君に出会う。
ああ、これぞ運命のしと。
二人はたちまち惹かれ合う。
4本の弓をつがえ舞いのごとく連射する強く美しい二人。
無敵カップルの誕生だ。
バーフバリは彼女を本国に連れ帰り、妃に迎えるつもりだった。
しかしそうは問屋が卸さない。
遠く離れた本国で宿命のライバル バーフバリの動向を探る従兄殿。
間者の報告によるとバーフバリの野郎、外遊先の姫君にメロメロだというではないか。
さぞや浮かれておるにちがいない。
どれどれ?一体どんな女だい?
いわくの姫君の肖像画を見せられた従兄殿はおったまげた。
なんという美女だろう!
王座ばかりか美女まで娶ろうとは。
ぐぬぬ、許せん!
バーフバリが憎くて憎くてしょうがない彼は、王座を奪われた腹いせに恋人を奪ってやろうと悪どい計略を巡らせるのだった。
ああ、それとは知らない恋人たち。
一体どうなってしまうのだろう。
物語は、英雄バーフバリの軌跡を辿る豪華絢爛なスペクタクルアクション後編。
前半は、英雄バーフバリとデーヴァセーナ妃との出会いに遡り、彼らを襲った悲劇的な運命を。
そして後半は、親父に代わって奪われし王座を奪還する主人公の宿命の戦いを描く。
若い男女の恋の駆け引きは前作に引き続きコミカルな描写で、悲劇的なストーリーのささやかな救いとなっている。
見どころは、船で本国へ帰還する恋人たちを心象風景で表現したくだりか。
ファイナルファンタジーの飛空挺さながらのデッキで歌と踊りに酔いしれる、それはそれは美しい一幕だった。
勧善懲悪という分かりやすい構図。
これでもかというほどの派手なアクションと豪華絢爛な演出。
しかし何かが物足りない。
宿命のライバルの従兄殿がどうしょうもないクズ野郎としか描かれていないからだ。
人心も権力も欲すれば欲するほどその手から遠のいてゆく。
嫉妬に狂うしかない従兄殿の悲哀を描き込めばストーリーにさらなる奥行きが生まれたかも。
自分の器を見極めるのは勇気の要ることだ。
そういった凡人の苦悩が逆に従兄殿への共感を呼んだかもしれない。
いろいろ惜しい一作。
プラバース
アヌシュカ・シェッティ
ラムヤ・クリシュナ
ラーナー・ダッグバーティ
ナーサル
サティヤラージ
スッバラージュ 共演。
原題「BAAHUBALI 2:THE CONCLUSION」
2017年 インド制作。